• 2026年10月10日
  • 2026年9月14日

ホルター心電図で何がわかる?動悸・心房細動から睡眠時無呼吸まで

「ときどき胸がドキドキする」「脈が飛ぶ感じがする」「夜中に突然、心臓が速くなる」――このような症状で循環器内科を受診したものの、診察室で心電図をとると「異常ありません」と言われた経験はないでしょうか。

実は、不整脈の診断で難しいのは、症状がある瞬間の心電図を記録することです。

通常の心電図で記録できるのは、わずか十数秒程度。そのため、1日に数回、あるいは数日に1回しか起こらない不整脈は、診察室の心電図ではなかなか捕まりません。

そこで役立つのが「ホルター心電図」です。

ホルター心電図とは?

ホルター心電図は、小型の心電計を身につけたまま日常生活を送り、長時間にわたって心電図を記録する検査です。

仕事中、食事中、歩いているとき、睡眠中など、普段の生活の中で心臓がどのように動いているかを調べられることが大きな特徴です。

特に、

・動悸や脈が飛ぶ感じがある
・突然脈が速くなる
・ふらつきや失神がある
・健康診断で不整脈を指摘された
・心房細動が疑われる

といった方では重要な検査になります。

24時間ホルター心電図でわかること

当院では、従来型の24時間ホルター心電図を1台用意しています。

症状がほぼ毎日ある方であれば、24時間の記録でも症状と心電図の関係を捉えられる可能性があります。

ホルター心電図では、単に「不整脈がある・ない」だけではなく、かなり多くの情報が得られます。

代表的なものが、期外収縮、心房細動・心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍などの頻脈性不整脈です。

一方、脈が極端に遅くなる洞不全症候群、房室ブロック、長い心停止(ポーズ)など、徐脈性不整脈を見つけることもできます。

さらに、「動悸を感じた時間」と実際の心電図を照らし合わせることができます。

これは非常に大切です。患者さんが「不整脈だ」と感じていても、その瞬間の心電図は正常な場合があります。反対に、自覚症状がほとんどないのに重要な不整脈が記録されることもあります。

つまりホルター心電図は、症状の正体を心電図で確認する検査でもあるのです。

24時間では足りないこともあります

問題は、不整脈が毎日起こるとは限らないことです。

「動悸は週に1~2回」「数日に一度、突然脈が速くなる」という方に24時間心電図を行っても、その日に症状が出なければ診断できません。

そこで当院では、病状に応じてPhilips社のePatchを用いた最長7日間の連続心電図記録も行っています。

長く記録すれば、それだけ発作性の不整脈を捉えられる可能性が高くなります。実際、7日間のパッチ型心電図は24時間ホルターより不整脈の検出率が高かったことが報告されています。特に発作性心房細動や上室性頻拍などでは、長期間記録する意義があります。

したがって当院では、症状が頻回なら24時間、数日に1回程度なら7日間というように、症状の頻度や疑っている病気を考えて検査方法を選択しています。

「7日間の方が必ず優れている」ということではなく、患者さんごとに適切な記録時間を選ぶことが重要です。

心房細動は「検査した日にない」ことがあります

長時間心電図が特に力を発揮する病気の一つが、発作性心房細動です。

心房細動は脈が不規則になる不整脈で、脳梗塞や心不全の原因になることがあります。

ところが発作性心房細動は、「朝だけ」「夜中だけ」「数日に一度」といった出方をするため、通常の心電図や24時間ホルターでは記録できないことがあります。

近年の大規模な日本のデータでも、7日間記録することで、発生頻度の低い心房細動の検出が24時間記録より増えることが報告されています。

「検査で異常がなかった=不整脈が絶対にない」とは限らないのです。

ePatchでは「睡眠時無呼吸」の手がかりも

ePatchのもう一つ興味深い特徴が、CVHR(Cyclic Variation of Heart Rate:周期性心拍変動)解析です。当院ではCVHRI(CVHR index)として、その出現頻度にも注目しています。

睡眠時無呼吸が起こると、睡眠中に呼吸が止まり、その後呼吸が再開するという現象が繰り返されます。それに伴い心拍数も周期的に変化します。

この特徴的な心拍数の変化がCVHRです。

CVHRの頻度は、睡眠時無呼吸の重症度を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)と相関することが報告されており、ePatchの解析でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)を疑う手がかりとして利用できます。

これは循環器診療ではとても重要です。

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、心房細動、心不全などと深く関連しています。そのため「動悸を調べるために心電図を記録したところ、睡眠中の心拍変動から睡眠時無呼吸も疑われた」ということが起こり得るのです。フィリップスもePatchのCVHR解析を、睡眠呼吸障害のスクリーニングに役立つ機能として位置づけています。

ただし、CVHRだけで睡眠時無呼吸症候群を確定診断することはできません。

異常が疑われた場合には、睡眠簡易検査や必要に応じて終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)など、適切な睡眠検査へ進むことが大切です。日本循環器学会のガイドラインでも、循環器疾患に伴う睡眠呼吸障害では検査結果を適切に解釈し、必要に応じて詳しい睡眠検査を行うことの重要性が示されています。

「いつ起きるか」を考えて検査を選ぶ

不整脈の診断では、心電図検査そのもの以上に、どのくらいの期間記録するかが重要になることがあります。

毎日のように起こる動悸なのか、週に1回なのか。昼間なのか、睡眠中なのか。運動したときなのか、安静時なのか。

こうした症状の特徴を詳しくお聞きしたうえで、24時間ホルター心電図と7日間のePatchを使い分けることが、不整脈を見逃さないためのポイントです。

「動悸がするのに心電図では異常なしと言われた」
「脈が飛ぶことがある」
「夜中に急に心臓がドキドキする」
「スマートウォッチで心房細動の可能性を指摘された」

このような場合には、一度循環器内科にご相談ください。

心臓は24時間働き続けています。だからこそ、診察室の数秒だけではなく、普段の生活の中の心臓を見る。

それがホルター心電図の大きな役割です。

おおにし心臓クリニック 内科・循環器内科 079-287-9616 ホームページ