• 2026年9月5日
  • 2026年8月30日

「どのくらい運動して大丈夫?」―CPX(心肺運動負荷検査)でわかる心臓と体力の状態

「最近、階段を上ると息が切れるようになった」
「歩いていると動悸がするけれど、心臓は大丈夫?」
「心臓病があるので、どのくらい運動してよいのかわからない」

循環器内科では、このような相談をよく受けます。

安静にしているときの心電図や心エコー図検査は、心臓病を調べるうえで非常に重要です。しかし、私たちが日常生活で困る症状の多くは、じっと座っているときではなく、歩いたり、階段を上ったり、体を動かしたときに現れます。

そこで役立つのが、CPX(心肺運動負荷検査:Cardiopulmonary Exercise Testing)です。

CPXは「運動したときの体」を調べる検査

CPXでは、主に自転車型の運動器具を使って少しずつ運動の強さを上げながら、心電図、血圧、脈拍に加えて、マスクを通して呼吸中の酸素や二酸化炭素を測定します。

つまり、

心臓はどのくらい働いているのか
肺は十分に酸素を取り込めているのか
筋肉はその酸素をうまく利用できているのか

を、運動しながら総合的に評価する検査です。

単に「体力がある・ない」を調べる検査ではありません。

人間の運動能力は、心臓、肺、血管、筋肉などが連携することで成り立っています。CPXでは、この一連の働きを詳しく調べることができます。

「息切れ」の原因を考える大きな手がかりになります

「息切れ」は循環器内科で非常に重要な症状です。

ところが、息切れの原因は一つではありません。

心不全や心臓弁膜症などの心疾患だけでなく、肺の病気、貧血、筋力低下、運動不足などでも息切れは起こります。また、安静時の心電図や心エコー図では大きな異常がなくても、運動すると心臓の機能が十分に対応できず、症状が出る場合があります。

CPXでは実際に運動したときの心拍数や血圧、呼吸、酸素摂取量などを同時に確認できるため、

「なぜ運動すると息切れするのか」

を考えるうえで非常に多くの情報が得られます。

動悸や胸部不快感など、運動時に現れる症状についても同様です。

心電図や心エコー図に異常があった人にも役立ちます

健康診断や他院で、

「心電図に異常があります」
「心エコーで少し異常があります」

と言われ、不安になって受診される方も少なくありません。

しかし、安静時に認める異常が、実際の生活や運動能力にどの程度影響しているのかは、安静時検査だけでは判断できないことがあります。

そのような場合、CPXによって運動時の心拍数や血圧、酸素摂取量などを評価することで、その人の心臓が運動にどの程度対応できているかを調べることができます。

検査結果は、その後の治療や追加検査を考えるうえでも重要な判断材料になります。

心臓病の人に「どのくらい運動してよいか」を示せる

心臓病の患者さんから、

「ウォーキングは何分すればよいですか?」
「脈拍はいくつまで上げても大丈夫ですか?」
「ジムに行ってもよいですか?」

という質問をよく受けます。

ところが、「1日30分歩きましょう」という一般論だけでは、本当にその人に適した運動量かどうかはわかりません。

年齢が同じでも、心臓の状態や体力は一人ひとり違います。

CPXでは、AT(嫌気性代謝閾値)と呼ばれる指標などから、その人に適した運動強度を評価することができます。

簡単にいえば、

「このくらいの強さなら、心臓に無理をかけすぎずに運動できます」

という目安を、感覚ではなく検査結果に基づいて提示できるのです。

心臓リハビリテーションでは特に重要な検査です

心筋梗塞、狭心症、心不全、心臓手術後などの患者さんでは、適切な運動を続けることが再発予防や体力回復のために重要です。

しかし、運動は弱すぎても十分な効果が得られず、強すぎれば心臓への負担になります。

そこで心臓リハビリテーションではCPXの結果を参考にしながら、一人ひとりに合った運動負荷を設定します。

さらに、心臓リハビリを一定期間行ったあとに再度CPXを行うことで、

「以前より運動できるようになったか」
「心臓や体の効率が改善しているか」

を客観的に比較することもできます。

体重や血液検査だけではわからない「体の変化」が数字として見えることは、運動を続ける励みにもなります。

CPXは「頑張れる限界」を競う検査ではありません

「運動負荷検査」と聞くと、

「限界まで自転車をこがされるのでは?」

と心配される方もいます。

CPXはスポーツ選手の体力測定だけを目的とした検査ではありません。医療機関で行うCPXでは、心電図、血圧、脈拍、症状などを確認しながら段階的に負荷を上げ、安全性に配慮して検査を行います。

胸痛、強い息切れ、血圧や心電図の異常などがあれば、必要に応じて運動を中止します。

もちろん、病状によってはCPXを行わない方がよい場合もありますので、事前に医師が検査の適応を判断します。

当院では週7枠、約50分かけてCPXを行っています

当院では現在、CPX(心肺運動負荷検査)を週7枠設けています。

検査には準備を含めて約50分をかけ、運動中の心電図、血圧、呼吸状態などを詳しく測定します。

CPXでは非常に多くのデータが得られるため、その場で簡単に結果だけをお伝えするのではなく、検査後にデータを詳しく解析し、後日あらためて結果をご説明しています。

当院では特に、

・心電図や心エコー図で異常を指摘された方の運動時評価
・息切れ、動悸などがある方の原因評価
・心疾患の診断や治療方針を考えるための評価
・心臓病患者さんの安全な運動量の設定
・心不全患者さんの心臓リハビリテーションの運動負荷設定
・心臓リハビリテーション後の効果判定

などにCPXを活用しています。

「休んでいるとき」だけでなく「動いたとき」の心臓を見る

診察室では患者さんは座っています。心電図も心エコー図も、多くの場合は安静にした状態で行います。

しかし、実際の生活では歩き、階段を上り、買い物をし、仕事や家事をします。

だからこそ、

「安静時には大丈夫でも、動いたときにはどうなのか」

を知ることが重要です。

CPXは、心臓を単独で見る検査ではありません。

心臓、肺、血管、筋肉が協力して、体をどれだけ動かせるのかを調べる検査です。

「最近息切れしやすい」
「運動すると動悸がする」
「心臓病があるけれど運動を始めたい」
「心臓リハビリでどのくらい運動すればよいかわからない」

そんな方にとって、CPXは今後の診療や運動方針を考えるための非常に有用な検査の一つです。

「運動してよいか」だけではなく、「どのくらい運動すればよいか」まで考える。

これが、CPXを行う大きな目的です。

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