- 2026年7月25日
- 2026年6月24日
骨粗しょう症と循環器疾患 ― 骨と血管の意外な関係をご存じですか?
「骨粗しょう症」というと、転倒や骨折の原因となる骨の病気というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし近年の研究により、骨粗しょう症は単なる骨の病気ではなく、心臓や血管の病気とも深く関係していることが分かってきました。
実際に、骨粗しょう症の方では動脈硬化や心血管疾患が多くみられ、逆に心臓病や高血圧の患者さんでは骨密度が低下しやすいことも報告されています。
今回は「骨粗しょう症と循環器疾患の関係」について、わかりやすく解説します。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症とは、骨の量(骨密度)が減少し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。
特に以下のような方で多くみられます。
- 閉経後の女性
- 高齢者
- やせている方
- 運動不足の方
- 喫煙習慣がある方
- 過度の飲酒習慣がある方
- ステロイド薬を長期間使用している方
骨粗しょう症が進行しても痛みなどの症状がほとんどないため、「気づかないうちに進行する病気」といわれています。
骨と血管はなぜ関係するのでしょうか?
一見すると骨と血管はまったく別の臓器のように思えます。しかし、どちらもカルシウム代謝や加齢の影響を受けるという共通点があります。
最近の研究では、骨密度が低い人ほど動脈硬化が進んでいることが報告されています。
動脈硬化とは、血管の壁が硬くなり弾力を失う状態です。進行すると、
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
などの重大な病気を引き起こします。
骨ではカルシウムが失われている一方で、血管壁にはカルシウムが沈着しやすくなることが知られており、「骨から失われたカルシウムが血管にたまる」という現象が起こると考えられています。
そのため、骨粗しょう症と動脈硬化は同時に進行することが少なくありません。
骨粗しょう症と高血圧の関係
高血圧は動脈硬化の大きな原因です。
また、高血圧の方では骨密度が低い傾向があることも報告されています。
その理由として、
- 慢性的な炎症
- カルシウム代謝異常
- 加齢による影響
- 運動不足
などが考えられています。
高血圧の治療で定期通院している方は、骨の健康にも目を向けることが大切です。
心不全患者さんでは骨粗しょう症が多い
循環器内科でよく診療する心不全患者さんでは、骨粗しょう症の合併が非常に多いことが知られています。
その理由として、
- 高齢者が多い
- 運動量が低下する
- 栄養状態が悪化しやすい
- 慢性炎症が続く
などが挙げられます。
心不全患者さんでは筋力低下やふらつきも起こりやすいため、骨粗しょう症を合併すると転倒・骨折の危険性がさらに高くなります。
高齢の心不全患者さんにとって、骨折は寝たきりの原因となるだけでなく、その後の心不全悪化にもつながるため注意が必要です。
骨折は寿命にも影響する?
骨粗しょう症による骨折の中でも、特に大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)は重要です。
高齢者では骨折をきっかけに、
- 歩行能力の低下
- 要介護状態
- 認知機能低下
- 心不全悪化
- 肺炎
などを引き起こしやすくなります。
「たかが骨折」と思われがちですが、実際には健康寿命や生命予後に大きな影響を与える病気なのです。
骨と血管を同時に守る生活習慣
骨粗しょう症と循環器疾患には共通する危険因子がたくさんあります。
そのため、以下のような生活習慣改善は両方の予防につながります。
適度な運動
ウォーキングや軽い筋力トレーニングは、
- 骨密度の維持
- 血圧改善
- 動脈硬化予防
- 心肺機能向上
に役立ちます。
バランスの良い食事
カルシウムだけでなく、
- たんぱく質
- ビタミンD
- ビタミンK
- マグネシウム
を十分に摂取することが重要です。
禁煙
喫煙は骨粗しょう症だけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高めます。
適正体重の維持
過度のやせは骨密度低下の原因になります。一方で肥満は高血圧や糖尿病、心血管疾患の原因となります。
適切な体重管理を心がけましょう。
循環器内科で骨の健康も意識しましょう
循環器内科を受診される患者さんの多くは、
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心不全
- 慢性腎臓病
などを抱えておられます。
これらは動脈硬化だけでなく、骨粗しょう症のリスクにもなります。
「心臓の治療を受けているから骨は関係ない」と思われるかもしれませんが、骨と血管は密接につながっています。
心臓病の予防と同時に骨折予防にも取り組むことで、健康寿命を延ばし、いつまでも自分らしく生活できる可能性が高まります。
当院では高血圧や動脈硬化、心不全などの循環器疾患の診療を通じて、患者さんの健康寿命を支える医療を目指しています。気になる症状や健康上の不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
