- 2026年8月1日
- 2026年7月19日
家族が心筋梗塞・脳卒中なら要注意?「家族歴」と心臓病の本当の関係
診察室で患者さんからよく受ける質問があります。
「父が50代で心筋梗塞になりました。私もなりやすいのでしょうか?」
あるいは、
「母が脳卒中になったので、自分も心配です。」
このような不安を抱くのは当然のことです。
結論から申し上げると、家族歴がある人は心筋梗塞や脳卒中になりやすい傾向があります。しかし、「家族歴がある=必ず病気になる」という意味ではありません。むしろ、家族歴を知っていることは早めに予防を始められるという大きなメリットでもあります。
「家族歴」とは何でしょう?
家族歴とは、ご両親や兄弟姉妹など血縁者がどのような病気になったかという情報です。
循環器内科では特に次のような病気を確認します。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞・脳出血
- 大動脈瘤・大動脈解離
- 心不全
- 不整脈
- 突然死
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
これらは遺伝的な体質が関係することがあるため、診療では非常に重要な情報になります。
なぜ家族歴があるとリスクが高くなるのでしょう?
理由は大きく2つあります。
① 遺伝的な体質
血圧が高くなりやすい体質や、コレステロールが高くなりやすい体質、糖尿病になりやすい体質などは、ある程度遺伝します。
例えば家族性高コレステロール血症という病気では、生まれつきLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が非常に高く、若い頃から動脈硬化が進みやすくなります。
また、不整脈や心筋症など、一部には遺伝が強く関係する病気もあります。
② 家族で似た生活習慣
遺伝だけではありません。
食生活や塩分の摂り方、運動習慣、喫煙習慣、飲酒量などは家族で似ることが少なくありません。
つまり、「遺伝」と「生活習慣」の両方が重なってリスクが高くなるのです。
特に注意したい「若くして発症した家族歴」
家族歴の中でも特に重要なのは、若い年齢で発症した場合です。
例えば、
- お父さんが55歳未満で心筋梗塞
- お母さんが65歳未満で心筋梗塞
- 若くして脳卒中を発症
- 50歳前後で突然亡くなった家族がいる
このような場合は、遺伝的な要因が関係している可能性があり、一般の方より注意深い健康管理が勧められます。
診察では、「誰が」「何歳で」「どのような病気になったか」を教えていただけると、とても参考になります。
家族歴があれば必ず病気になるのでしょうか?
答えはいいえです。
家族歴は「病気になる運命」ではなく、「病気になりやすい体質を持っている可能性がある」ということです。
実際には、
- 血圧を適切に管理する
- LDLコレステロールを下げる
- 糖尿病をコントロールする
- 禁煙する
- 適度な運動を続ける
- 体重を管理する
これらによって、心筋梗塞や脳卒中のリスクは大きく減らせることがわかっています。
つまり、家族歴があるからこそ、予防の効果がより重要になるのです。
家族歴がある人におすすめしたい検査
症状がなくても、一度循環器内科で相談することをおすすめします。
当院では患者さん一人ひとりのリスクに応じて、必要な検査をご提案しています。
例えば、
- 血圧測定
- 血液検査(コレステロール・血糖値)
- 心電図
- 心エコー図検査
- 頸動脈エコー検査
- 血圧脈波検査(血管年齢・動脈硬化の評価)
などを組み合わせることで、動脈硬化や心臓病のサインを早い段階で見つけられることがあります。
特に心エコー図検査は、心臓の大きさや動き、弁膜症、心筋の状態などを痛みなく詳しく調べることができる重要な検査です。
また、頸動脈エコー検査では首の血管を観察し、全身の動脈硬化の程度を推測できます。
家族歴は「知っていること」が最大の強み
家族歴は変えることはできません。
しかし、その情報を知っていることで、
「少し早めに検査を受ける」
「生活習慣を見直す」
「必要なら薬で予防する」
という行動につなげることができます。
何も知らずに過ごすより、はるかに有利なのです。
まとめ
「家族に心筋梗塞や脳卒中になった人がいるのですが、私もなりやすいですか?」
この質問への答えは、
「一般の方よりリスクは高い可能性があります。しかし、適切な検査と予防を行うことで、そのリスクは大きく減らすことができます。」
ということになります。
ご自身では健康だと思っていても、高血圧や脂質異常症、初期の動脈硬化は自覚症状がほとんどありません。
家族歴は「不安になるための情報」ではなく、「未来の病気を防ぐための情報」です。
もし、ご家族に心筋梗塞や脳卒中、突然死などの既往がある方は、一度循環器内科でご相談ください。あなたに合った予防法を一緒に考え、将来の心臓病や脳卒中を防ぐお手伝いをいたします。
