• 2026年8月15日
  • 2026年7月19日

心臓病患者こそ筋トレが必要!サルコペニア・フレイルを防ぐレジスタンストレーニング

「最近、歩く速度が遅くなった」
「階段がつらくなった」
「以前より疲れやすい」

このような変化を年齢のせいだと思っていませんか?

もちろん加齢の影響もありますが、その背景には「サルコペニア」や「フレイル」が隠れていることがあります。特に心不全や心筋梗塞、弁膜症などの心疾患を持つ方では、これらの状態が進行しやすく、生活の質や寿命にも大きく影響することがわかっています。

近年の心臓病治療では、「心臓を治療する」だけでなく、「筋肉を守る」ことが重要視されています。その中心となるのがレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)です。

今回は、心疾患患者さんにおけるサルコペニア・フレイルとレジスタンストレーニングの重要性について解説します。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、加齢や病気によって筋肉量や筋力が低下した状態を指します。

例えば、

  • 握力が弱くなる
  • 歩く速度が遅くなる
  • 椅子から立ち上がりにくい
  • 転びやすくなる

といった症状が現れます。

筋肉は身体を動かすだけでなく、血糖を消費し、代謝を維持し、全身の健康を支える重要な臓器です。そのためサルコペニアが進行すると、糖尿病や高血圧の悪化、転倒・骨折のリスク増加、さらには心血管疾患の予後悪化にもつながります。

フレイルとは?

フレイルとは「健康な状態」と「要介護状態」の中間に位置する状態です。

具体的には、

  • 体重減少
  • 疲れやすさ
  • 筋力低下
  • 歩行速度低下
  • 身体活動量低下

などが特徴です。

フレイルになると、風邪や入院などのちょっとしたきっかけで急速に体力が低下し、介護が必要な状態へ進行する可能性があります。

しかし、フレイルは早期に発見し適切な運動や栄養管理を行うことで改善が期待できる状態でもあります。

心疾患患者はサルコペニア・フレイルになりやすい

心疾患患者さんでは息切れや疲労感のため活動量が低下しやすくなります。

すると、

心臓病

活動量低下

筋力低下(サルコペニア)

体力低下(フレイル)

さらに活動量低下

心不全悪化

という悪循環が生じます。

実際に心不全患者さんではサルコペニアやフレイルの頻度が高く、これらを合併している患者さんほど再入院や死亡のリスクが高いことが報告されています。

つまり、筋肉を守ることは心臓を守ることにもつながるのです。

心不全は「心臓だけの病気」ではない

以前は、心不全の症状は心臓の働きだけで決まると考えられていました。

しかし現在では、息切れや運動能力低下には骨格筋の異常も大きく関与していることがわかっています。

同じ心機能であっても、

  • 筋力が保たれている人
  • サルコペニアが進行している人

では日常生活の活動能力に大きな差があります。

そのため最近の心不全治療では、薬物療法だけでなく運動療法による筋肉機能の維持・改善が重要な柱となっています。

サルコペニア・フレイル予防の鍵はレジスタンストレーニング

レジスタンストレーニングとは、筋肉に抵抗をかける運動です。

具体的には、

  • スクワット
  • 椅子からの立ち上がり運動
  • かかとの上げ下げ
  • ゴムバンド運動
  • 軽いダンベル運動

などが含まれます。

レジスタンストレーニングを継続すると、

  • 筋肉量維持
  • 筋力向上
  • 歩行能力改善
  • 転倒予防
  • 日常生活動作の改善

が期待できます。

特に下肢筋力の維持はフレイル予防の中心的な対策です。

「歩くだけ」では不十分なことも

ウォーキングは心臓病患者さんにとって非常に重要な有酸素運動です。

しかし有酸素運動だけでは加齢に伴う筋力低下を十分に防げない場合があります。

そのため現在の心臓リハビリテーションでは、

  • ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動
  • レジスタンストレーニング

を組み合わせることが推奨されています。

有酸素運動で心肺機能を維持し、筋力トレーニングでサルコペニア・フレイルを予防することが理想的です。

運動だけでなく栄養も重要

筋肉を維持するためには運動だけでは不十分です。

筋肉の材料となるタンパク質を十分に摂取することも重要です。

高齢者では食欲低下や偏食によってタンパク質不足に陥ることがあります。

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく摂取し、適切な運動と組み合わせることで筋肉量の維持につながります。

心疾患患者が筋トレを行う際の注意点

レジスタンストレーニングは有益ですが、自己流で無理をすることは危険です。

以下のような症状がある場合は運動を中止し、医師へ相談してください。

  • 胸痛
  • 強い息切れ
  • 動悸
  • めまい
  • 失神

また、

  • 息を止めて力む
  • 重すぎる重量を扱う
  • 急激に負荷を増やす

ことは避ける必要があります。

特に高血圧や心不全の患者さんでは、呼吸を止めずに行うことが重要です。

心臓リハビリで安全にサルコペニア・フレイル対策を

心臓リハビリテーションでは、医師・看護師・理学療法士などが患者さんの状態を評価しながら運動プログラムを作成します。

心拍数や血圧を確認しながら安全に運動を行えるため、心疾患患者さんでも安心して取り組むことができます。

特に高齢の心不全患者さんでは、「心機能の改善」と「サルコペニア・フレイル予防」の両方を目標にした運動療法が重要です。

まとめ

心疾患患者さんにおいて、サルコペニアやフレイルは単なる加齢現象ではありません。心不全の悪化や再入院、要介護状態につながる重要な問題です。

しかし、

  • レジスタンストレーニング
  • 有酸素運動
  • 適切な栄養管理

を組み合わせることで、その進行を予防し改善できる可能性があります。

近年の心臓病治療は「心臓だけを診る医療」から「患者さん全体を支える医療」へと変化しています。

心臓病があるから運動を避けるのではなく、心臓病があるからこそ適切な運動を行うことが大切です。

最近体力の低下や筋力低下を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。当院では心臓リハビリテーションを通じて、サルコペニア・フレイル予防を含めた総合的な心血管管理を行っています。

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